2013年07月31日

スペイン脱線事故の備忘の続き

 これを書いてから保安装置関連でいろいろわからないことが出てきたので、少し追記します。今回は事実関係よりも個人的な見解が多めに含まれます。

 すでに書いたように、事故現場付近では保安規格が変わっていて、現場では旧来のASFAが、隣接するトンネルの向こう側までは新しいERTMSが採用されていました。ところがいくつかの報道によると、今回事故を起こした730系車両は、全区間にわたってERTMSではなくASFAを使用していたようです。

To further complicate the investigation, given the fact also that the ERTMS works perfectly on the stretch of Madrid-Valladolid, but these trains do not use it then in the Ourense-Santiago, even in the 80 km where already installed and tested, confirmed sources of the Administration.
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El Pais,"La seguridad del tramo no era la del AVE" translated with Google Translate
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適当訳:よくわからないことに、ERTMSはMadrid-Valladolid線で完全運用されており今回の路線でも導入されていたにもかかわらず、列車では使われていなかったらしい。

IRJ has learned from a senior source at Renfe that while ETCS is operable on the Ourense – Santiago high-speed line, class 730 sets of the type involved in the derailment operate exclusively on Asfa on this route despite the fact that they are equipped with ETCS. All other passenger trains operating on this line[...] operate on ETCS. The reasons for this have not yet been firmly established.
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IRJ, "ETCS not operable on Santiago crash train"
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適当訳:Renfe社によれば、事故を起こした路線ではETCSが導入されていた。しかし730系はETCSに対応しているにもかかわらずASFAだけを使用していた。他の旅客車両はETCSを使用していた。理由は明らかにされていない。

 これについてはRailPlanetというサイトで日本語でわかりやすくまとめられていて参考になりました。

 今回の事故の原因が大幅な速度超過だったことはおおむね疑いの余地がないようです。あとは運転士にどの程度責任があったかが問題になります。
 もしも運転士が保安装置の警告を無視してまで高速のまま事故現場に進入したなら、運転士により重い責任が負わされるでしょう。一方、保安装置が警告を出していなかったとしたら、保安装置の故障や、正しく設置されていなかった疑いが生じ、運転士には前者より狭い範囲の過失があったといえるでしょう。つまりシステムの要因が強くなります。

 そこで当然関心が向くのは、事故現場近くにあるERTMSの末端部において、ERTMSが列車にどのような警告を発していたか(例えば、800m先にあるカーブを見越して減速を指示していたのか)、だったのですが、結局事故を起こした列車はERTMSを使用していなかったようなので、その問いかけは無意味になったようです。
 ただし、

However, the final ETCS balise on the high-speed line, which is situated 4km from the crash site, would only inform the driver that he is exiting an ETCS section, that all automatic driving modes are disabled, and that manual driving mode is active. This means that if ETCS was in use the accident may still have occurred, and any train could in theory enter the 80km/h section at 200km/h.
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同上
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適当訳:事故現場から4km離れた所に設置されていたETCS地上子は運転士にETCS区間が終わり自動運転が解除されることを告げるだけのものだった。つまりETCSを使っている列車でも80km/h制限だった事故現場に200km/hで進入することはありえたということだ。

 とのことなので、潜在的なリスクについてはこれからも検討されるべきだと思います。

 余談ですが少し引っかかるのはETCS地上子が4km離れた所に設置されている、という点です。ERTMS区間の末端はトンネルの出口付近で、事故現場からはせいぜい1kmあるかないかです(地図)。

 いずれにせよ、事故列車がASFAを使用していたとするなら、そのASFAが事故現場手前で運転士に警告を発していたか否かが新たな関心となります。これに関して報道は混乱しています。

 まず、運転士は警告を受けていながら無視をしたとする報道。

エルパイス紙によると、運転士は「運転席の速度超過の警報装置が作動し(警報を了解したことを示す)ボタンを押した」と証言。
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毎日新聞『スペイン列車脱線:現場の安全装置は旧式…人為ミス重なり

In this case, moreover, there are beacons ASFA 300 and 600 meters before the curve in question, as well as that turn a kilometer ahead a diversion for trains to Pontevedra. And officials say ADIF and techniques that worked. In fact, according to sources close to ADIF, the engineer admitted in his statement that he saw the sign of ASFA on the dashboard of his car and tried to stop.
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El Pais, 同上
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適当訳:事故現場の300m手前、600m手前、1km先の分岐点にはASFA地上子が設置されており、ADIF社によると動作に問題はなかった。ADIF社によれば、運転士はASFAのサインが運転席に表示されているのを見て止めようとしたと証言しているという。

 一方、運転士は警告を受け取っていないことを示唆する報道も。

He acknowledged that went 190 kilometers per hour in Angrois curve, a section limited to 80, for "an oversight "and that that was the reason of the derailment: thought it was in another section of the route and so stopped when it was too late.
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El Pais, "El maquinista se despistó porque creía que estaba en otro tramo y frenó tarde" translated with Google Translate
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適当訳:運転士は80km/h制限の事故現場を190km/hで走行し、それが事故原因だったと認めた。運転士は路線の別の区間だと勘違いしたために停車が遅れたとも話している。

In this part of the journey there was no communication between the train and the beacons.
The driver was driving manually and was to follow the route book which stated that the speed limit curve A Grandeira is 80km/h.
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El Mundo, "Los sistemas de señalización del tramo del accidente" translated with Google Translate
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適当訳:事故当時、トンネルから事故現場までの間は、列車と地上子のやり取りはなかった。運転士は手動でマニュアルに従って80km/h制限を守るよう運転することになっていた。

 下段のほうの引用は前回の記事でも示したEl Mundo紙のコンテンツからのものです。これは自動翻訳されない部分に書かれていたので最初無視していたのですが、なんとなく手動で書き写して翻訳してみたら意外と大事なことが書かれていました。
 ただ、自分の探し方が悪い可能性もありますが、これと同じ内容の報道は英字メディアでは見当たりませんでした。単に取りこぼしたのか、誤りとわかって無視しているのかはわかりませんが、El Mundo紙が今に至るまで修正していないところを見ると取りこぼしているのかもしれません。当然ながら、英字メディアからの孫引きが主となる日本語メディアでも見当たりません。
 スペイン語メディアの洪水のような報道をそのまま引き写せとは言いませんが、日本語メディアは報道がやや断片的過ぎるように思います。それも抽出の仕方が自分たちのストーリー建てに沿ったもののようで、意地悪な言い方をすると恣意的に感じられるときもあります。

 まあそういうわけで、ありがちなことですが、運転士の事故直前の行動については矛盾した報道が示されています。はたして運転士は現場手前で警告を受けたのか、受けたとしてそれを無視したのか、というあたりの事実関係が判明しない限り、はっきりしたことはわからないでしょう。
 この記事によると、スペイン時間の30日ですからおそらく今頃、現場から回収されたブラックボックスが開封されるそうです。これによって事故当時の列車のふるまいが明らかになれば、車両側の異常など他の可能性も含めて、もう少し原因究明は前進するでしょう。


posted by 45-50s at 00:16| Comment(0) | TrackBack(0) | いろいろ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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