先日公開したVRM盆栽に対するghostさんの記事を読みました。その記事からは、ghostさんの入門的なレイアウト製作へのスタンスを2つ読みとることができます。
1)理想のレイアウトは量、質共に大き過ぎることが多く、製作は難しい。そこでレイアウトを現実的な範囲で製作するには、質の削減より量の削減を検討するべきであり、質は可能な限り維持せねばならない。
2)エキスパートが率先して難しいツールを使って見せることで、ビギナーのツールに対する興味を喚起することが大切。またこのとき、平然とツールを使いこなすことでビギナーの抵抗感を払拭できる。
まず1)についてですが、量と質という二要素のうち、量は削減してよくて質は維持すべき、というのは一面的な見方です。
ここでghostさんが挙げているVRMにおける「質」とは、配置ツール以外のツールも積極的に用いた情景の作りこみのことだと理解します。しかし情景の作りこみという「質」がレイアウト面積や部品数といった「量」より優れている、とは限りません。例えば「質」より「量」を圧倒的に優先したわかりやすい例は、いわゆるお座敷レイアウトです。たくさんのレールが多くの場合広めの敷地に敷かれますが、情景はほぼ犠牲になっています。
ghostさんが仰るように「量を減らしてでも質を維持」することがVRMレイアウトのひとつの現実的な方法論ならば、「質を減らしてでも量を維持」というのも立派に方法論として成立するはずです。
また一方で、個人的に盆栽がビネットやデスクトップサイズ(以下小レイアウト)と比して質を大きく損なっているとは考えていません。盆栽が失ったのはトラックプランとレイアウト面積の自由、それだけです。
ひとつの指針として「部品を置いて地形テクスチャーを貼る(場合によってはついでにスクリプトを添える)だけでもOK」という説明を付加してはいますが、これはそれ以上のツールの応用を否定するものではありません。むしろ高度編集や複雑なスクリプトを取り入れた盆栽だって大いにアリだと思います。
ある側面から見れば、盆栽とは言わば「理想の鉄道風景の濃縮」です。
レイアウトの製作過程の量と質を節約することで、理想の鉄道風景を具体化する思考過程に割く時間をより多く捻出し、それを盆栽に全力で投入しようというのです。この点はむしろ、ghostさんが小レイアウトに見出しているメリットとかなり近いと思います。
ちなみにもうひとつ、盆栽には「(かなり無理矢理に)列車が走行する」という一見重要なファクターがありますが、これは言ってしまえば自分の好みに過ぎません。どんなに小さいレイアウトでも可走行性は失いたくなかっただけの話です(走るビネットにも通じる)。そういう意味では可走行性を廃している一般のビネットも、見ようによっては「質を減らしている」と言えます。
ただし、
>読解力のない読者からすれば「VRMはそんなものなのか」という過小評価を招くのではないか
ghostさんのこの言及がそういう点の曖昧さを指摘されているのであれば、それは仰るとおりで、確かに説明不足だったと思います。
次に2)についてです。小レイアウトを通してghostさんがビギナーに伝えんとしていることは理解できます。つまり、ビギナーにとってとっつきにくい地形編集やスクリプトのような機能を実践してみせることで、ビギナーに「おおっこんなことができるのか」と驚嘆と興味を持たせるのが目的だと思います。
しかし残念ながら、「おおっエキスパートにはこんなことができるのか(でもオレはビギナーだから無理)」という認識しかしないビギナーはかなり多いとも思うのです。
話がそれますが、そもそもビギナーとエキスパートという区分けをすること自体、やや違和感があります。
これらの単語が登場したとき、自分も便利だからと早速拝借したのは事実ですし(もっともこの時点で、この2単語を主軸に据えた書籍が出ようなどとは想像だにしませんでした)、ghostさんが、何もVRMユーザーの階層区分を設けるために使っているのではないことは重々承知しています。ですがそういうロジックが、前提が、暗黙の了解が、どれだけの人々に通用するでしょうか。
思うに、エキスパートと名の付いたユーザーがどれだけ凄いことを行っても、いやむしろ凄ければ凄いほど、ビギナーの羨望の眼差しはツールよりも人間(エキスパート)の方に向けられるのではないでしょうか。
VRM4EGに「VRMの世界へようこそ」というフレーズが出てきます。しかし果たして、VRMとはビギナーにとって「ようこそ」と言われてはじめて足を踏み入れられるような別世界なのでしょうか。
このフレーズを目にしてワクワクする鉄道ファンは多いかもしれませんが、同時に、VRMの世界の扉を開くことにいらぬプレッシャーを膨らませる者もたくさんいるでしょう。
そこでghostさんの手法とは逆のアプローチを試みるのが、盆栽の第二の側面です。すなわち「VRMの世界へようこそ、想像を超えた高度で上質な世界が君を待っている」というような気合の入ったスタンスとは対照的に、「地形高度編集もスクリプトも、本当はとっても面白いけれども、今は存在さえ知っとけば大丈夫、とりあえず部品配置だけってのもアリだよ」という気の抜けたスタンスです(失望されるかもしれません、でもまあいいか)。
>鉄道模型シミュレーターレイアウトコレクションに寄稿した(中略)3つの壁とはすなわち、PCの性能限界、作業時間、ユーザーの根気であり、これらに真正面から衝突しなくとも、理想の鉄道風景の再現は可能であることを示唆したものです。
自分は残念ながら「鉄道模型シミュレーターレイアウトコレクション」を持っていないので詳細はわからないのですが、本来ここにはもうひとつ、「見慣れぬツール」という壁が存在するはずです。これは取りも直さず、先ほどから言及している地形編集やスクリプトなどのツールの存在です。
ghostさんのスタンスはこの壁に真正面からの衝突を促すものであって、自分はそれとは別にこの壁はとりあえずノミでつついていけばよい、という提言をするものです。
ネットVRM界には多くのユーザーがいて多種多様のアプローチが存在しています。VRMをはじめた人が中から自分に合ったものを見つけてくれればそれに越したことはないわけで、盆栽もその中の一つです。
2006年07月20日
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