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VRMでリアルな情景を作るには、なんだかんだ言って製作者の地味な努力が欠かせません。何もない平地の真ん中に素晴らしくリアルな東京タワーがあっても、それは“情景”ですらないのです。VRMにおいては、部品そのもののリアルさではなく、その置き方の妙こそが情景のリアリティを決めることは、皆さん納得していただけると思います。
しかも厄介なことに、リアルな情景というのは、要は日常生活において見過ごしてしまうようなモノの在り方のことであり、だからこそ、恣意的な部品配置による再現は難しいですし、その工夫に気付いてもらったり、あるいは伝えたりすることも難しいのであります。
MOTOKIさんの「Developing Town」は、そのような、目立たなくとも巧妙な工夫が各所に詰まった良作です。標識類がていねいに並べられた線路を走る113系は、汽笛吹鳴標識を通りかかるとひとりでに警笛を鳴らします。そういったさりげない工夫が、レイアウト全体の質を底上げするのです。
このスクリーンショットの田んぼは、隣り合った区画の田んぼの高度をあえてずらすことで、小さなレイアウト内に立体感を加えることに成功しています。ここでも、単純に田んぼ全てを一律に高度を下げるだけではない、もう一段階発想を進めた工夫がなされています。
非常にもったいなく感じるのは、地形テクスチャーがデフォルトのものである点です。この地形テクスチャーは大抵のVRMユーザーなら飽きるほど目にしているはずのもの(審査員の人々は特にそうでしょう)なので、これをそのまま使うことは初見のインパクトの新鮮さを損なう効果しかもたらしません。
つくりは非常に素晴らしく、個人的に共感もたくさんできる作品だけに、そのことだけが惜しまれます。
ところでこの作品内には、なぜかこいのぼりがいくつか掲げられています。画像では少しわかりにくいですが、手前と奥のふたつのこいのぼりの風向きがきちんと揃っていることに、MOTOKIさんの細やかな工夫の片鱗をまたもや垣間見ることができて楽しくなりました。